当ブログでは、ビジネスシーンで“誰でも・手軽に使える”資料デザインノウハウ・テクニックをお伝えしています。
プレゼン資料のデザインにおいて、意外と悩みがちなのが表紙のデザイン。「表紙には何を書いたらいいの?」「どうレイアウトすればわかりやすく、おしゃれに見えるの?」などの声は、ビジネスシーンではよく聞かれます。
そこで今回は、プレゼン用のパワーポイント資料における「表紙の作り方・デザインのポイント」について、プロのデザイナーが肝となる要点を詳細解説してみました。そもそもの表紙の役割から、記載すべき項目、デザインのポイント、おすすめのデザインパターンなどを網羅しているので、日頃パワーポイントで資料作成することが多い方の参考になれば幸いです。
※本記事内の表紙サンプルに出てくるタイトル・企業名等は、すべて架空のものです。
- パワーポイント資料の表紙の役割
- パワーポイント資料の表紙に記載すべき項目
- パワーポイント資料の表紙を作るときに使うと便利なツール
- パワーポイント資料の表紙デザインパターンとレイアウトのポイント
- 株式会社トリッジ代表取締役 / デザイナー / コンテンツディレクター
- グラフィック・WEBデザインやオウンドメディアの運営サポート・ディレクションを手掛けつつ、パワポ資料作成の研修講師兼アドバイザーとしても活動中。パワーポイント資料作成の企業研修実績も多数(延べ150社以上、2,000人以上にレクチャー)。著書に『ひと目で伝わるプレゼン資料の全知識』(株式会社インプレス発行)がある。
プレゼン用パワポ資料の表紙の役割
まずはプレゼン用のパワポ資料における“そもそもの表紙の役割”を整理しておきましょう。普段なんとなく作ってしまっているパワポの表紙にも、実は以下のような重要な役割があります(詳細は下に続きます)。
- プレゼンの目的を伝える
- 誰が・誰に向けて作った資料なのかを伝える
- 作成日・機密情報を含むものなのかを伝える
- 資料の読み手の興味・関心を惹きつける
プレゼンの目的を伝える
まず大切な役割として挙げられるのは「プレゼンの目的を伝えること」。パワポ資料の表紙は、プレゼンの聞き手(資料の読み手)が一番最初に見るスライドです。そのため、冒頭で「今回のプレゼンは何について話されるのか」「何を目的としているのか」が表紙を通じて理解できれば、プレゼンの全体像がイメージしやすくなり、その後の話の内容理解が進みやすくなります。
狙いがわかるようなタイトル、話の内容を象徴するようなイメージ画像などを使用することで、プレゼンの目的を資料の表紙ではっきりと伝えることができるようになります。
誰が・誰に向けて作った資料なのかを伝える
また、資料の作者と宛先を記載することで、この資料(プレゼン)が「誰が・誰に向けて作られたものなのかを伝える」、そんな役割もあります。
パワーポイントの資料はプレゼン当日に見られるのはもちろんのこと、後日になってからプレゼンに出席していなかった関係者が見たり、参考資料として長く保存されることもよくあります。つまり、パワポ資料が“独り歩きする”という性質があるわけですね。
そのような一人歩きした資料の場合、作者や宛先(プレゼン相手)がわからないと、内容の理解が難しくなったり、誤解を与えてしまう可能性すら出てくるので、表紙がその「誰が・誰に向けて作られたのか」を伝える役割を担います。
作成日・機密情報を含むものなのかを伝える
上記の“独り歩きする”というパワポ資料の性質を踏まえると、「資料の作成日や機密情報を含んでいるのかを伝える」ことも重要になりますが、それも表紙の役割です。
前述のとおり表紙は資料の読み手が一番最初に見るスライドなので、そこで「いつ作られたのか」や「重要な社外秘情報を含むのか」が瞬時にわかれば、その後資料が社内で展開された時や保存時の扱いもやりやすくなります。
また進行中の案件・プロジェクトに関するプレゼン資料だった場合、資料内容が更新されることもよくありますよね。そのような意味でも、「いつ時点の内容なのか」を伝えることも表紙の重要な役割です。
資料の読み手の興味・関心を惹きつける
あとデザイン的な側面を考えると、表紙には「資料の読み手の興味・関心を惹きつける」という役割もあるでしょう。
プレゼンの場合、最初に聞き手に興味・関心を抱いてもらえないと、内容理解が進みにくくなったり、集中力が切れやすくなってプレゼンから離脱してしまうこともよくあります。そのため最初についつい話を聞きたくなるような・資料を読みたくなるような気持ちを抱いてもらう、そんなビジュアル効果としての役割も表紙にはあるわけです。
なお、前述のとおり表紙は「最初に見てもらうスライド」なので、そのような意味でプレゼンや資料の“第一印象”に関わってきます。第一印象に関する心理学上の法則「メラビアンの法則」によれば、「視覚情報が55%の割合で影響する」と定義されているので、この点からも表紙におけるビジュアル訴求は重要であると言えるでしょう。
プレゼン用パワポ資料の表紙に記載すべき項目
パワーポイント資料における表紙の役割を確認した後は、実際に表紙に記載すべき項目について整理していきます。資料内容・プレゼン内容によって記載すべき項目は変わってくると思いますが、主なものとしては以下の4点を押さえておきましょう(詳細は下に続きます)。
- タイトル(+サブタイトル)
- 宛先
- 作者情報
- 作成日・機密情報の有無
タイトル(+サブタイトル)
最も重要で必ず記載すべき項目は「タイトル」です。まぁ、これは当たり前かもしれませんが笑。前述のとおり、表紙の一番の役割は「プレゼン・資料の目的を伝えること」です。その上でタイトルはその目的を端的に伝える役割を担っています。
また、必要であればタイトルに加えて「サブタイトル」を添えても良いでしょう。それによってより正確に・わかりやすく目的を伝えることができるようになります。タイトルもサブタイトルも、資料の内容を瞬時に(パッと見で)理解できよう、あまり冗長にならないよう端的でわかりやすい表現にすることがポイントです。
宛先
社外向けのプレゼン資料や提案・企画書の場合は、誰に向けて作られた資料なのか、「宛先」も記載しましょう。前述の通り、パワポ資料はその後に独り歩きする性質があるので、後々になって資料を読み返したときに内容理解しやすくなるよう、誰に読んで欲しい資料なのかを明記すべきです。
ただし、社内向けの資料の場合(部内資料など)は宛先がなくてもわかることが多いので、そのようなケースでは省略しても良いでしょう。
作者情報
誰向けの資料なのかと同様に、誰が作ったのかを示す「作者情報」も明記すると良いでしょう。特に社外向けプレゼンの場合、複数の会社とコンペになるケースもよくありますが、そのときに表紙に作者情報が入っていないと、「この資料ってどこの会社の提案資料だっけ?」と印象が薄くなってしまう可能性が出てきます。
しっかりと先方への印象付けを意識して、「株式会社〇〇」や「株式会社〇〇 □□部 担当:△△」など細かく表紙に記載しても良いですね。
作成日・機密情報の有無
あと必要に応じて、資料の作成日と機密情報の有無も記載しましょう。「Confidential」などの記述によって社外秘情報を含んでいることが表紙で瞬時にわかれば、その後の資料の管理・保存がやりやすくなりますし、作成日が入っていれば資料内の情報の“鮮度”もすぐわかるようになります。
特に資料の内容が随時アップデートされていくような場合は、いつ時点の情報が記載されているのかが重要になることも多いので、そういった進行案件の資料では必ず作成日を漏らさないようにしましょう。
表紙スライドの作成にはスライドマスターの活用が便利
実際にパワーポイントで表紙のスライドを作るときは、スライドマスター機能を活用するのがおすすめ。スライドマスターには[タイトルスライド]というレイアウトマスターが用意されており、これがイメージとしては「表紙用に用意されているテンプレート」になります。
この[タイトルスライド]にあらかじめデザインを施して(タイトルや作者情報などを記載するためのプレースホルダー等を配置しておく)、表紙用のテンプレートとして用意しておくことで、すぐにそのレイアウトを呼び出すことができたり、何度も使いまわすことができるようになります。
なお、スライドマスター・レイアウトマスターの詳しい構造・使い方については、別の記事で解説しているので、併せてチェックしてみてください。
実際の[タイトルスライド]のレイアウトマスターを使う場合は、以下の手順で表示・編集を行います。
①パワーポイントを開き、[表示]タブ→[スライドマスター]をクリックし、スライドマスター画面に移動する。
②画面左に並んでいるレイアウトマスター(一番上のスライドマスターを除く、小さいスライド群)のうち、1番目のものが[タイトルスライド]。これを選択する。
③必要なプレースホルダーなどを配置していく(不要なものは削除してOK)。ロゴなども必要であれば画像として挿入する。
④全ての作業を終えたら、スライドマスターを閉じる
- 上記の作業を終えると、新規でスライドを挿入する際やレイアウトマスターを変更する際に、[タイトルスライド]で設定したデザインのスライドを挿入・選択できるようになります。
おすすめの表紙デザインパターンとレイアウトのポイント
表紙に載せるべき項目などを確認したあとは、筆者おすすめの「表紙デザインパターン」とその際のレイアウトのポイントをご紹介します。実例も一緒に載せておくので、パワポの表紙で悩んでいる方は参考にしてみてください。
テキスト(+ロゴ)のみのパターン
まず最初のおすすめは「テキスト(+ロゴ)」のみで構成するデザインパターンです。例えば下の例のようなイメージ。
このパターンは非常にシンプルなデザインですが、記載すべき内容はちゃんと網羅されていますし、シンプルだからこそタイトル(=プレゼンの目的)がしっかり伝わりやすいと言えます。
また載せる項目が少ないため、時間をかけずに作成することができたり、印刷時にインクの使用量を最小限に抑えることができるというメリットもあります。
各テキストを配置する時のパターンとしては、以下の3つがおすすめです。
- 全部左揃え
- 左上→右下に向けて、斜め一直線に置く
- 全部中央揃え
下の画像が「全部左揃え」にしたパターン例です。左側に一本の透明な直線が意識できるように、左に全てを揃えて配置します。比較的力強さを感じるレイアウトです。
「左上→右下に向けて、斜め一直線に置く」パターンの例が下の画像。横書きの場合、日本人の目線の流れは左上から右下に向けて動いていくのが必然であり、その流れに合ったレイアウトなので、違和感を感じにくい自然な配置に仕上がります。
「全部中央揃え」にしたものが下の画像の例です。全部左揃えにするよりも力強さはやや欠けますが、左右に均等の余白が出来上がるので、バランスの良さ・安定感を感じやすいレイアウトです。
なお、背景が真っ白のままだとシンプルすぎる(+やや安っぽく見える)ことがあるので、その場合は上の3つの例のように背景をメインカラーで全部塗り、配置する文字とロゴを白抜きにしてみましょう。これだけでもデザインが洗練され、よりインパクトを生み出すこともできます。
ただしこの場合は印刷時のインク使用量がかなり多くなるので、カラー印刷する際は注意が必要です。
全画面に画像+テキスト(+ロゴ)のパターン
2つめのおすすめは「全画面に画像+テキスト(+ロゴ)」で構成するデザインパターンです。例えば下の例のようなイメージ。
このパターンは、画像というビジュアル要素を大きく見せることができるので、非常にインパクトが強く、プレゼンの聞き手・資料の読み手の興味関心をグッ引くことができる点が特徴です。またプレゼン内容に合った画像を使えば、話の概要を無意識に連想・イメージさせることもできます。
デザインする際のポイントとしては「被写体の扱い」です。被写体(主役)の周りに余白やスペースがある場合は、テキストをその余白・スペースに配置するのが良いでしょう。そうすることで、被写体を邪魔することなく、テキストも読みやすい形で表現することができます。
使用する画像において被写体が全体を埋めている(余白・スペースがない)場合は、そのままテキストを載せてしまうと文字が見づらくなってしまうことがあります。このような時は、画像全体をやや暗くし(明るさを調整し)、その上から白抜きのテキストを重ねて配置しましょう。これで被写体とテキストが重なっても、文字は見やすい状態をキープできます。
なお、画像の明るさは、パワーポイント内の機能を使うことで簡単に調整することが可能です。操作ステップは以下をご参考ください。
- 任意の画像をスライド内に挿入する。
- 画像を選択した状態で、[図の書式設定]タブ→[修正]をクリック。
- [明るさ/コントラスト]ウィンドウで、明るさを低くする。
- または[図の書式設定]タブ→[修正]→[図の修正オプション]をクリックし、表示された[図の書式設定]ウィンドウから明るさを調整してもOK。
画像+テキスト(+ロゴ)+四角い余白スペースのパターン
3つめのおすすめは「画像+テキスト(+ロゴ)+四角い余白スペースのパターン」で構成するデザインです。例えば下の例のようなイメージ。
このパターンは2つめのものと同様に、画像を大きく見せることができるので、インパクトを強く残しつつ、プレゼンの聞き手・資料の読み手の興味関心をグッ引くことができますし、プレゼン内容に合った画像を使えば、話の概要を無意識に連想・イメージさせることもできます。
2つめのものとの違いは四角図形を使って余白スペースを活用している点です。複雑な画像(ごちゃごちゃと色々なものが映り込んでいる、メインの被写体の位置が悪いなど)の場合、どうしてもテキストをうまく上から配置できないケースが出てきます。そのような時に四角い図形をテキストの下に敷いて余白スペースを作ってあげることで、テキストをきれいに・見やすくレイアウトできるようになるのが、このパターンのメリットです。
四角図形の配置や大きさはケースバイケースにはなりますが、縦または横に目一杯広げてあげると、よりダイナミックさが出て、インパクトを強める事ができます(下の画像参照)。
また、四角図形の中(余白スペースの中)にテキストを全て綺麗に収めて並べてもいいですが、あえて四角の外側まではみ出してテキストを置いてもいいでしょう(下の画像参照)。はみ出す・ズレることでデザインに意外性が生まれ、おしゃれな雰囲気が出やすくなります。
ただし、全体のバランスなどをとるのが少し難しくなるので、デザインの難易度はやや高めかもしれません。1段上のデザインを目指したい方は、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
まとめ:表紙も資料の重要な“情報源”
今回はプレゼン用のパワーポイント資料における「表紙の作り方・デザインのポイント」についてまとめてみました。
プレゼン資料では意外と表紙が軽視されがちな面もありますが、表紙もプレゼンの聞き手・資料の読み手にとっては貴重な情報源です。どのような目的のプレゼンなのか、いつ・誰が・誰に対して行うプレゼンなのか、どういった内容がこれから話されるのか。これらの情報が表紙から伝われば、よりプレゼンの内容理解が進みやすくなります。
日頃パワポ資料を作る機会が多い方は、ぜひ今回の記事の内容を参考に、表紙作りをしてみてください。