当ブログでは、ビジネスシーンで作成する資料で“誰でも・手軽に使える”デザインノウハウ・テクニックをお伝えしています。
今回は、「文字の強調」についてです。プレゼン用のパワーポイント資料を作っていると、「キーワードを強調したい!」という場面にはよく出くわします。そんな時にどのように文字を強調したら良いのか、その方法とポイントをデザイナーである筆者がまとめてみました。
ノンデザイナーの方々でも日頃の資料作成などで活用できるデザインテクニックなので、多くのビジネスパーソンの皆さんの参考になれば幸いです。
- 文字の強調の種類
- 文字を強調するときのポイント
- 株式会社トリッジ代表取締役 / デザイナー / コンテンツディレクター
- グラフィック・WEBデザインやオウンドメディアの運営サポート・ディレクションを手掛けつつ、パワポ資料作成の研修講師兼アドバイザーとしても活動中。パワーポイント資料作成の企業研修実績も多数(延べ150社以上、2,000人以上にレクチャー)。著書に『ひと目で伝わるプレゼン資料の全知識』(株式会社インプレス発行)がある。
文字の強調は資料のわかりやすさを大きく左右する
今回はプレゼン用のパワーポイント資料で「文字を強調する方法・ポイント」に関するお話。パワポ資料を作っていると、「このキーワード・文章を強調したいな!」という場面にはよく出くわしますよね。
ただ具体的に「どのようにデザインすれば文字が強調されるのか(強調されて伝わるのか)がよくわからない」とか、「いちいち細かく文字を強調していくのは面倒…」という声もよく聞きます(私のデザイン研修に参加してくださった生徒さんからも以前よく言われました笑)。
ただこの「文字の強調」というのは非常に重要で、これがしっかりできる・できないによって、パワーポイント資料のわかりやすさが大きく変わってきます。そのため、文字の強調についてはノンデザイナーの方々でもしっかり押さえておくべきポイントです。
今回はそんな文字の強調方法やポイントをこれからまとめていきます。
強調の種類
パワーポイントの資料の場合、文字の強調方法はいくつか種類があります。主なものとして、まずは以下の6つを押さえておきましょう。
- サイズを大きくする
- 色を付ける
- 太くする(太字にする)
- 下線を引く
- 斜体(イタリック)にする
- 影(ドロップシャドウ)をつける
それぞれの強調方法にはポイント・使い分け方・注意点などがありますので、以下の項で順に整理していきます。
サイズを大きくする
まず1つめの強調方法は「文字のサイズを大きくする」です。小さい文字が並ぶ中で、キーワードとなる文字(強調したい文字)だけをグッと大きくする。そうすると、人の目線は無意識のうちにその大きい文字に向かうようになります。
文字のサイズに“大きい・小さいのギャップを作ってあげる”と、大きい文字が強調される、ということですね。これは「ジャンプ率」といい、以前別の記事でも解説したデザインテクニックの1つです。
比較的簡単に取り組めるやり方なので、ビジネス資料では使いやすい強調方法なのではないでしょうか。
色を付ける
2つめは「文字に色を付ける」です。通常、パワーポイントの文字の色は黒系の色を使うことが多いと思いますが、強調したい文字に別の色をつけることで、強調効果が得られます。
なお、パワーポイントで使う色は基本的にベースカラー(一番多く使う文字の基本色)・メインカラー(少し強調したい時に使う色)・アクセントカラー(めちゃくちゃ強調したい時に使う色)の3色のみが絶対原則なので、強調したい文字にはメインカラーまたはアクセントカラーを使うようにするのがポイントです。
詳しくは下の記事で解説しているので、気になる方はこちらも併せてご覧ください。
太くする(太字にする)
続いては「文字を太くする(太字にする)」です。これも比較的ポピュラーな強調の仕方かもしれません。
ただシンプルに文字を太くするだけだと、意外と強調効果が弱いので、前述した「文字を大きくする」や「色を付ける」と併用するのがおすすめ。
なお、パワーポイントで太字による強調を行うとき、少し注意した方が良い点が2つあります。
1つは、太くし過ぎると文字が潰れて見づらくなることがあるということ。太くすると“文字の中の余白”が少なくなり、非常に圧迫感が出てくるため、可読性が低下します。そうすると、文字・文章が書かれている部分が黒々と見えて、読みづらくなるんです。これは「ゴシック体」の解説をした記事でもお伝えしていました。
そのため、「太くする=見やすくなる」ではないことを意識し、太くするときはポイントを絞って行いましょう。特に複数行にわたる文章を太くするのは厳禁。太くするなら数単語だけがおすすめです。
2つめの注意点は、パワーポイントの「B」(ボールド)機能は使わず、フォント一覧からボールドのフォントを直接指定すべき、ということ。「B」を使うと、元々ボールドが用意されていないフォントの場合、パワーポイントが無理やり機械的にフォントを太くしてしまうため、見た目があまりきれいにならないことがあるためです。
そのため少し手間はかかってしまいますが、太字にするときは必ずフォント一覧からボールドのフォントを直接指定するようにしましょう。
下線を引く
4つめの方法は「文字に下線を引く」です。これはパワーポイントの標準機能である下線機能を使って行います。
下線は比較的強調効果が弱いため、本文や比較的長めの文章で強調したいところに使用すると効果的です。前述の太字は長い文章に使ってしまうと非常にうるさく(ごちゃごちゃとして見づらく)なってしまいます。下線であればそこまでのうるささは感じずに、しっかり強調効果も得られるので、長めの文章にはこちらを使いましょう。
ただ、だからといってこれも使い過ぎたりするとかえって読みづらくなりますので、その点は注意です(複数行にわたる文章であっても、下線を入れて強調するのは1〜2行程度にしましょう)。
斜体(イタリック)にする
5つめは「文字を斜体(イタリック)にする」です。これも強調効果としてはあまり強くありませんが、ポイントを絞って使うことで、一定の効果は得られます。
ただし、この斜体による強調は英文(アルファベット)に使うようにしましょう。日本語のフォントだと斜体に対応していないものもあるためです。
斜体に対応していないフォントの場合、たとえばパワーポイントの標準機能の「I」(イタリック)を押すと、パワーポイントが無理やり機械的に文字を斜めにしようとするため、太字と同様に形が美しくならなかったり、最悪の場合全く斜体にならないこともあります。そのため基本的には英文(アルファベット)で使うにしましょう。
影(ドロップシャドウ)をつける
そして最後6つめの方法は「影(ドロップシャドウ)をつける」です。文字に影を後付けすることで、協調効果を得るというものです。ただ、これについては最初にはっきりとお伝えしておきますが、「文字に影をつける」のは行わない方がベターです。
パワーポイントでドロップシャドウは文字に使った場合、他の強調方法よりも見た目がうるさくなりやすい(ごちゃつきやすい)んですよね。また、見た目としてもパワーポイントのドロップシャドウはどこか安っぽい・幼い印象を受けやすいので(←こんなことを言うとMicrosoftに怒られそうですが…)、ビジネス資料との相性もあまり良くありません。
強調したい場合は他の5つを使えば十分に効果が得られますので、「文字に影(ドロップシャドウ)をつける」のは避けましょう。
文字を強調するときの注意点
以上の方法を使えば、パワーポイント資料で文字を強調することができますが、どの強調方法を使うときでも共通的に意識した方がいいポイントがあります。それは「強調する箇所を絞る」ということ。
たとえば「①大きくする + ②色を付ける + ③太字」を組み合わせて強調しようとしても、1スライドの中にその強調箇所がたくさん出てきてしまったら、結局どこを強調したいのかがわかりづらくなります。下の例を見たとき、どの「DESIGN」の文字を一番強調したいか、わかりますか? きっと判断がつかないはず。
つまり、「強調」というのはある種の“仲間はずれの状態”になっていなければ成立しないということ。“一定の秩序(ルール)の中で、ある一部分だけがその秩序からはみ出している・逸脱している”からこそ、その部分が「強調」されているように見えるわけですね。
そのため、どこかを強調したい場合、その箇所はなるべく少なくしましょう。パワーポイント資料であれば、強調箇所は1スライドの中で1〜2つ程度に絞るのがおすすめです。
まとめ:強調方法を組み合わせながら使い分けるのがベター
今回はパワーポイント資料での「文字の強調」について、その方法やポイント・注意点をまとめました。
今回お伝えした通り、強調のやり方はいくつかあるので、適材適所で使い分けをしたり、それぞれを組み合わせながら強調するのが◎。ただし、それと同じくらい大切なことは“強調する箇所を絞る”ということなので、この点は必ず意識しながら資料を作ってみましょう。
ぜひ参考にしてみてくださいね。