当ブログでは、ビジネスシーンで作成する資料で“誰でも・手軽に使える”デザインノウハウ・テクニックをお伝えしています。
今回は、パワーポイント資料での「フォント」について、デザイナーである筆者がフォントの種類、選び方のポイント、おすすめの和文・欧文フォントなどをわかりやすくまとめてみました。
日頃プレゼン資料などをパワーポイントで作ることが多い方の参考になれば幸いです。
- 和文フォントの種類と特徴
- 欧文フォントの種類と特徴
- フォント選びで重要な要素
- 資料タイプ別のフォントの使い分け方
- プレゼン用パワーポイント資料(投影用)でのおすすめフォント(和文・欧文)
- 株式会社トリッジ代表取締役 / デザイナー / コンテンツディレクター
- グラフィック・WEBデザインやオウンドメディアの運営サポート・ディレクションを手掛けつつ、パワポ資料作成の研修講師兼アドバイザーとしても活動中。パワーポイント資料作成の企業研修実績も多数(延べ150社以上、2,000人以上にレクチャー)。著書に『ひと目で伝わるプレゼン資料の全知識』(株式会社インプレス発行)がある。
和文フォントの種類(ざっくり)と特徴
今回はプレゼン用のPowerPointの資料に使う「フォント」についてまとめていきます。まずは和文フォントの種類から整理していきましょう。
フォントというと様々な種類がありますが、実のところ日本語のフォント(和文フォント)はざっくり分類すると2種類しかありません(あくまでざっくりです。厳密にはもう少し細かく分かれます)。その2つが以下の2つです。
- 明朝体
- ゴシック体
この2つはほとんどの方はご存知ですよね。日本語のフォントは基本的にこの「明朝体」と「ゴシック体」に分類されるわけですが、それぞれで特徴は少し異なります。
明朝体の特徴
まず明朝体ですが、明朝体はうろこ(三角形の山)のある書体で、ベーシックな書体のひとつです。この書体は、中国の宋の時代に原型ができ、明の時代に完成したのだとか(筆者も調べて初めて知りました笑)。

いくつかある中で特に押さえておきたいのは「細く見えるフォントである」ということ。明朝体は、必ず“横線が縦線よりも細くなっている”ので、パッと見たときの印象として細く見えます。そのため、たくさん文字が並んでいても読みやすい(=可読性が高い)フォントです。

また、読んだ時の印象としては、優雅で繊細なイメージだったり、和や伝統・高級感を感じさせてくれます。ただその一方で、やや固い印象も持たれやすいので、カジュアルなテイストのデザインにはあまり向いていないという特徴もあります。
代表的な明朝体は以下を参照ください。
- 游明朝体
- ヒラギノ明朝
- Noto Serif JP
- 小塚明朝
- リュウミン
ゴシック体の特徴
次はゴシック体です。ゴシック体は明朝体とは違い、文字にうろこ(三角形の山)がありません。日本では活版印刷の普及が始まる明治時代(?)あたりに西洋からゴシック体が流入してきたのではないかという意見等があるようですが、実際に日本でゴシック体が出現したのは実のところ不明な点が多いそうです。

ゴシック体は明朝体と違い、「太く見えるフォント」です。ゴシックは基本的に縦線も横線もほぼ同じ太さでできていて、縦横が均一にデザインされているため、明朝体と比べるとやや太めに見えます。そのため、遠くから見ても見やすい(=視認性が高い)フォントと言えます。

また、線の太さが均一で形状も少し丸みを帯びているため、親近感・カジュアルさ・安定感・元気の良さなどの印象を与えやすいという特徴もあります。ただし、細いゴシック体の場合は、より大人っぽい洗練された雰囲気や女性的な印象も纏うこともあるので、太さによっても多少印象は変わります。
代表的なゴシック体は以下を参照ください。
- 游ゴシック
- ヒラギノ角ゴシック
- Noto Sans JP
- メイリオ
- 小塚ゴシック
欧文フォントの種類(ざっくり)と特徴
続いて欧文フォントです。外資系の企業さんや海外との取引がある企業さんなどは、英文でパワーポイントを作ることも多いと思うので、どのフォントを選ぶべきなのか迷ってしまう方も多いはず。
欧文フォントも超ざっくり分類して、とりあえず以下の2種類を押さえておくと良いでしょう。
- セリフ体
- サンセリフ体
ただこちらもあくまでざっくり、というか超ざっくりの分類です。欧文フォントは細かく分けると特にバリエーションが豊富なので(スクリプト体、デコラティブ体…etc)。
セリフ体の特徴
まずセリフ体ですが、このフォントは文字の端に「セリフ」というひげ・うろこのような装飾がついているのが特徴で、和文フォントでいえば明朝体に似ています。このフォントは歴史が長く、古代ローマの時代から使用されていたことがわかっているので、「ローマン体」とも呼ばれています。

セリフ体は明朝体と同様、全体の印象としてはやや細めに見えるため、たくさん文字が並んでいても比較的読みやすく(=可読性が高い)感じます。
また雰囲気として伝統や格式を感じることもできるので、高級感をもたせたいときに使いやすいフォントでしょう。一方で、やや古めかしさや古典的な印象も持たれやすいので、その点には少し配慮が必要です。
代表的なセリフ体は以下を参照ください。
- Times New Roman
- Century
- Garamond
- Trajan
- Didot
サンセリフ体の特徴
次はセンサリフ体です。サンセリフ体はセリフ体のようなひげ・うろこがない、和文フォントでいうゴシック体に近いフォントです。
ちなみにサンセリフ(Sans-Serif)のサン(Sans)はフランス語で「〜のない」という意味なので、サンセリフという名前は“セリフがない書体”ということを意味しています。

この書体は19世紀に入ってから使用され始め、主に商業目的(ポスター、チラシ、商業看板など)で生み出されたと言われています。
ゴシック体と同様に、縦線・横線の太さはほぼ均等で、やや太めに見えるので、遠くから見ても見やすい(=視認性が高い)フォントと言えます。
形状がとてもシンプルなので近代的でありながら、親しみも感じやすいでしょう。ただし、セリフ体と比べるとややカジュアルな印象に映る傾向もあります。
代表的なサンセリフ体は以下を参照ください。
- Arial
- Helvetica
- Futura
- Avenir
- DIN
見やすいフォントの3要素
次にフォントの見やすさを左右する重要な要素を整理しておきます。人が文字を「見やすい!」と感じるためには、以下の3つ要素が必要になります。
- 視認性:文字の“見えやすさ”を表す
- 可読性:文字の“読みやすさ”を表す
- 判読性:文字の“誤読のしにくさ”を表す
これら3つの詳細については、他の記事でも解説しているので、気になる方は下の記事も併せてご覧ください。
明朝体は可読性は高いが視認性はやや低い
その上で、これら3要素の中で明朝体はどのような特徴があるかというと、先に書いた内容でも少し触れていますが、明朝体は比較的細く見えるフォントであるため、“可読性が高い”フォントといえます。
ただしその一方で、細く見えてしまうがゆえに“遠くからは少し見づらく感じる”というマイナス面も併せ持っています。つまり、明朝体は「可読性は高いが、視認性はやや低い」ということですね。
ゴシック体は視認性は高いが可読性がやや低い
では、ゴシック体はどうでしょうか。ゴシックは太めに見えるフォントなので、遠くからでも見やすい「視認性が高いフォント」ということは前述の通りです。
ただこのゴシック体もマイナスな面も持っていて、太く見えるがゆえに文字がたくさん並んでいると見づらい(文字の隙間が少なくなり、黒々と見えてしまう)のです。つまり、ゴシック体は「視認性は高いが、可読性はやや低い」ということがいえます。
このように、和文フォントの明朝体とゴシック体は、ともに良い面・ちょっと残念な面の両方を併せ持っているので、うまく状況によって使い分けてあげるのがベターでしょう。
フォントを使い分けるときの考え方
では、フォントを使い分けるときは何を基準(目安)にすれば良いのでしょうか。筆者個人的には、「資料のタイプ別に使い分ける」のをお勧めしています。イメージとしては以下の通りです。
- 文字の多い“読む”資料:明朝体を使う
- 離れて遠くから“見る”資料:ゴシック体を使う
文字の多い“読む資料”は明朝体
文字の多い読み物的な資料は、「細いフォント」を使ってあげないと、すごく読みづらくなります。たとえば、下図を例に見てみましょう。たくさん文章が書かれていますが、文字のフォントはゴシック体が使われているため、全体的に黒々と見えて、すごく読みづらく感じませんか?

そのため、文字の多い読み物的な資料の場合は、下図のような細く見える明朝体を使ってあげた方が読みやすくなります。これであれば、先ほどの例よりだいぶ読みやすくなりましたよね。

世の中でも、新聞や小説で明朝体が使われているのは、実はこれが理由です。文字が多い時はやっぱり細い方が読みやすいわけですね。普段のお仕事の中で、文字の多い報告書や社内文書を作るときなどは、基本的には「明朝体」を使ってあげるのがベターでしょう。
遠くから“見る”資料はゴシック体
一方で、手元で読むような資料ではなく、遠くから見るのがメインの資料の場合は、ゴシック体がおすすめ。このタイプの資料の代表格は、「プレゼン用のパワーポイント資料」です。

プレゼンのパワーポイント資料は、スクリーンやモニターに映して、遠くから聴衆の方々が見ることも多いですよね。しかもたくさんの文字を「読み込む」というよりは、スライドの中身を「パッと見て理解してもらう」、そんな性格の資料になります。そのようなタイプの資料の場合は、太めに見えるフォントの方が、やっぱり見やすく感じるわけですね。
また、資料を投影する場合は「解像度」も気にしなければいけません。仮に投影するモニターの解像度が低いと、細い明朝体の場合に線が潰れてしまって見づらく感じるケースが出てきます。そのため、プレゼン用のパワーポイント資料は「ゴシック一択」くらいに割り切ってしまってOKでしょう。
パワーポイント(プレゼン資料)でのおすすめフォント
以上を踏まえて、最後にパワーポイント資料のおすすめフォントをご紹介します。
プレゼン時にスクリーンやモニターに投影する場合は、聴衆の方々が遠くから見るというシチュエーションが想定されるため、日本語には視認性の高いゴシック体、英語にはサンセリフ体のフォントを選ぶのがベターです。
おすすめのゴシック体フォント(和文フォント)
まずは日本語に使う和文フォントのおすすめから。特におすすめのゴシック体フォントは以下の4つになります。
- メイリオ
- 游ゴシック
- ヒラギノ角ゴ
- Noto Sans JP
メイリオ
1つ目のおすすめフォントは「メイリオ」です。メイリオは視認性を非常に重視して作られたフォントで、名前の由来も日本語の「明瞭」からとられているほど。

やや幅広で大きめなつくりになっており、少し丸みを帯びているのが特徴です。遠くから見てもモニターで見ても非常に見やすく、プレゼン資料での使用に適しています。
また、通常の文字の太さ(レギュラー)と太字(ボールド)の差がはっきりとしていてメリハリがつきやすいので、キーワードや見出しなどの強調もしやすいという特徴もあります。
ただ視認性最重視で開発されている関係で、このフォントは意図的に行間が広く出るようになっているため、複数行の文章を書くときは多少の行間調整が必要になることもあるので、その点は少し注意しましょう。
游ゴシック
2つ目のおすすめフォントは「游ゴシック」。このフォントは視認性に優れるだけでなく、全体がややスマートな作りになっているため、長文でも比較的読みやすいゴシック体です。

文字間に少しゆとりがある設計になっており、文字の大小にかかわらず文字同士が干渉しないことが、読みやすさにつながっています。
また文字のウェイト(太さ)もパワーポイントではlight〜Boldまで用意されていて、太さのメリハリもつけやすいので、文字の強調がしやすい点も良いポイント。
メイリオよりもより洗練された・落ち着いた印象を受けるフォントなので、ビジネスシーンでのプレゼン資料には最適なフォントです。
ヒラギノ角ゴ
3つ目のおすすめは「ヒラギノ角ゴ」。こちらも非常に視認性に優れ、やや大きめの字面で力強さを感じるフォントになっています。
ちなみにヒラギノ角ゴは世の中では道路標識などにも採用されています。道路標識は運転中にパッと見て内容を理解しなければいけないものなので、そのデザインに採用されているということからも、いかにヒラギノ角ゴが視認性に優れているかがわかりますよね。

その視認性の高さから、プレゼン資料にもピッタリ。使用すれば読みやすさとインパクトの強さを併せ持ったデザインを作り出すことができます。
ただし1つ注意しなければいけないのは、ヒラギノ角ゴは“Windows”のPCにはデフォルトでは入っていないという点です。MacのPCならデフォルトでヒラギノ角ゴが収録されているのですが、WinのPCには残念ながら収録されていないので、有料で購入しないといけないんですよね…。
この点は少し残念ポイントではありますが、それでも使えれば非常に見やすいフォントなので、ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。
Noto Sans JP
最後のおすすめは「Noto Sans JP」です。「Noto Sans」は、世界中の言語をサポートすることを目標にGoogleとAdobeが共同開発したフォントで、視認性と可読性のバランスに優れています。
PCにはデフォルトで収録されていませんが、無償でダウンロード・インストールして使用できるので、非常に使い勝手の良いフォントです。

実際に多くのWebサイトや各種資料などでも採用されており、私が知る限りでも複数の某有名デザイン事務所さんの提案資料などでも「Noto Sans」がよく使われています笑。
ウェイトも6種類(極細の「Thin」から極太の「Black」まで)と豊富なので、見出し・メインテキスト・キーワードなどでメリハリをつけながら使い分けができるのも特徴です。
筆者もプレゼン用のパワーポイント資料を作成・代行する際は、最近は游ゴシックかNoto Sansを使う割合がかなり増えています。安定感抜群なので笑。一度インストールしなければいけない手間はありますが、その手間をかけるだけの価値のある、おすすめのフォントです。
「Noto Sans JP」のダウンロードは、以下のリンクよりどうぞ!
◆ダウンロードURL:
https://fonts.google.com/noto/specimen/Noto+Sans+JP
おすすめのゴシック体フォント(欧文フォント)
続いて欧文フォントのおすすめをご紹介します。欧文フォントを選ぶときのポイントは、以前の記事でもお伝えした通り「判読性の高さ」(誤読しにくさ)が重要です。判読性の低いフォントを選んでしまうと、下の例のように誤読を招きやすくなります。

視認性・可読性に加えて、判読性の高い欧文フォントとしては、以下の2つがおすすめです。
- Arial
- Segoe UI
Arial
視認性・可読性・判読性の高い欧文サンセリフ書体の代表格に「Helvetica」という超メジャーフォントがあります。このフォントは世界中で愛され続け、多くの企業ロゴ(TOYOTA、BMW、FENDIなど)にも用いられているのですが、WindowsのPCには標準搭載されていません(Macには標準搭載されています)。
そこでWindows用にHelveticaの代替フォントとして用意されたと言われるのが「Arial」です(これにはデザインの歴史的にかなり議論を呼んだようですが笑)。このフォントが1つめのおすすめ。

スタイルとしてはとてもシンプル。標準的かつ現代的なサンセリフ書体で、クセのないデザインなので、サンセリフ体の中でも可読性の高さが際立つフォントです。またどのサイズでも読みやすく、印刷媒体(広告、ポスター、新聞など)とWebメディアの両方に適用しやすいのも特徴です。
デザインの世界では「ArialはHelveticaのコピーフォントだ!」なんて言われ続けていて、少々肩身の狭い面もありますが笑、実用面では抜群。パワーポイントで英文資料を作るときはぜひ利用したいフォントです。
Segoe UI
2つめのおすすめは「Segoe UI」です。Microsoftが商標を保有している書体の1つで、Windowsの標準フォントとして搭載されています。

少し丸みのある柔らかな雰囲気の書体でありながら、ビジネスシーンでも溶け込みやすいスマートな印象も持っているので、どんな場面でも使いやすい万能タイプの欧文フォントです。特にウエイト(太さ)が6種類用意されており、強調したい文字と通常の文字との太さのメリハリをつけやすい点がこのフォントの大きなメリットと言えるでしょう。
また小さな文字でも比較的判別しやすく、誤読を避けられる点も見逃せない特徴です。
以上が和文・欧文のおすすめフォントになります。パワーポイントで資料を作る際は、ぜひ参考にしてみてください。

まとめ:パワーポイント資料のフォントはゴシック一択
今回はパワーポイント資料でのフォント選びのポイント・おすすめフォントについてまとめてみました。
パワーポイントでは文字の視認性を意識するのが大切なので、そのためにはフォントでゴシック体を選ぶのがポイント。中でも今回の記事でご紹介した4つのゴシック系フォントはかなりおすすめです。
資料がどのように使われるのか(“読む資料”なのか、“見る資料”なのか)を考えた上で、最適なフォントを選んでみてくださいね!