当ブログでは、ビジネスシーンで“誰でも・手軽に使える”資料デザインノウハウ・テクニックをお伝えしています。
最近はビジネスシーンでも動画活用のニーズが強まっていますが、「動画を作りたいけど、専用の動画編集ソフトは使えない!」という人も多いのではないでしょうか。先日も、とある企業さんのパワポ作成研修で登壇させていただいた際に、そういった声が多数寄せられました。
そこで今回は、専用の動画編集ソフトを使わずに「パワーポイントで動画を作成・編集する方法」について解説してみたいと思います。パワーポイントであれば、多くのビジネスパーソンが使い慣れていると思うので。
ただし先に結論をお話ししておくと、正直なところ全体の効率を考えればパワポで動画を編集・作成するよりも、動画編集ソフトの使い方を覚えてソフトで作成する方がはるかに効率的です。それくらいに実はパワポで動画を編集・作成するのは手間がかかるんですよね。
それでも「パワーポイントで動画を作りたいんだ!」という方もいらっしゃると思うので、パワポを使った具体的な動画作成の手順などをわかりやすくお伝えしていきます。作業の参考になれば幸いです。
- パワーポイントで作ることができる動画の種類
- 動画を作る・編集する際のパワーポイントの操作手順
- 株式会社トリッジ代表取締役 / デザイナー / コンテンツディレクター
- グラフィック・WEBデザインやオウンドメディアの運営サポート・ディレクションを手掛けつつ、パワポ資料作成の研修講師兼アドバイザーとしても活動中。パワーポイント資料作成の企業研修実績も多数(延べ150社以上、2,000人以上にレクチャー)。著書に『ひと目で伝わるプレゼン資料の全知識』(株式会社インプレス発行)がある。
パワーポイントでの動画の作り方・編集方法
「パワーポイントで動画を作る」とひとことで言っても、パワポでは主に以下の2種類の動画を作成できます。具体的な作成の手順やポイントなどをそれぞれ解説していきます。
なお、本記事の内容は「Windows版」のパワーポイントでのやり方になりますので、その点ご留意ください。
- スライドショーを録画(プレゼン中の画面を録画)・書き出しする方法
- カメラで撮影した動画をパワーポイントで編集・書き出しする方法
スライドショーを録画・書き出しする方法
まず最初は「スライドショー動画を作成する」方法についてです。プレゼンするときに「スライドショー」にして聴衆の方々にパワポを見てもらうと思いますが、パワポではそのスライドショーの画面をそのまま画面録画して、プレゼン中の画面(スライド)や発表者の様子をそのまま動画にすることができます。
この動画の用途としては、たとえば「プレゼン内容を録画して、後日参加できなかった人と共有する」や「研修用としてスライドショー動画を作成し、全社で共有する」などが挙げられるでしょう。そのような用途があるときには非常に活用できる動画作成方法です。
スライドショーを録画する
パワーポイントでスライドショーを録画する場合の操作手順は、以下の通りです。
①プレゼン用に作成したパワーポイントを開く
②[スライドショー]タブ→[スライドショーの記録]をクリックすると、スライドショーを録画する画面に切り替わる。

③PCにインカメラやマイクが付属している場合は(または別途カメラと外付けマイクを接続してもOK)、画面右上部に表示されているカメラマークとマイクマークをオンにすると、発表者の顔や声もスライドショーと一緒に録画できるので、必要に応じてオン・オフを選択する。

④画面中央上部にある録画ボタン(赤丸ボタン)をクリックすると、スライド単位で録画されていく。

⑤録画終了したい場合は任意のタイミングで停止ボタンをクリックする。
以上がスライドショー動画の基本的な作り方・パワポの操作方法です。慣れてしまえば難しくないので、比較的簡単に作成することができます。
録画したスライドショー動画を書き出す
上記の方法でスライドショーを録画することができますが、そのままでは動画として視聴することはできません。録画したデータを「書き出す」ことで、視聴可能な動画データにすることができます。具体的な方法は以下を参照ください。
①スライドショーの録画を停止したら、[ファイル]→[エクスポート]→[ビデオの作成]を選択し、任意の画質を選んだ上で、[ビデオの作成]をクリックする。

②任意の保存場所を選択し、[OK]をクリックすると、録画した動画データの書き出しが開始される。

上記のとおり書き出す方法も難しくないので、録画を停止したら忘れないうちに書き出しまで行ってしまうのがおすすめです。
なお、動画の書き出しには少し時間がかかります。収録時間が長くなればなるほど、そしてPCの処理能力が低ければ低いほど多くの時間がかかるようになるので、急いでいる時などはその点にご注意を(長いと数十分〜数時間かかるケースもあります)。
別途撮影した映像をパワーポイント上で編集して書き出す方法
もう1つのパワポでの動画作成方法は「別途撮影した映像を、パワーポイント上で編集して書き出す」というものです。
スマホやミラーレス一眼カメラなどで撮影したデータを、パワポを使って編集(カット割り、テロップ入れなど)し、新規の動画ファイルとして書き出すことができます。つまり、動画編集ソフトの代わりとしてパワーポイントを使う、というようなイメージでしょうか。

ただ、この方法に関しては正直あまり作業効率は良くありません。筆者個人的にはパワポでこれをやるくらいなら、動画編集ソフトの使い方をササっと学んで、それを使って編集・書き出しした方が良いのではと感じています。今はスマホなどでも簡単に動画編集できますからね。それほどパワポでの動画編集作業は手間がかかるんです…笑。
そのためあまりおすすめはできませんが、パワーポイントでの動画の編集・書き出し方法も以下にまとめておくので、気になる方はチェックしてみてください。
なお、スライド内に任意の動画を挿入するやり方は別の記事で詳細に解説しているので、動画の挿入・埋め込み方法から確認したい場合は先にこちらの記事をご覧ください。
不要な箇所をトリミングする(再生時間を変更する)
パワーポイントで動画内の不要な箇所をトリミングする(再生時間を変更する)場合の操作手順は、以下の通りです。この作業はパワーポイントでも比較的簡単に行うことができます。
①スライド内に任意の動画を挿入する。

②動画を選択した状態で、[再生]タブ→[ビデオのトリミング]をクリック→[ビデオのトリミング]ダイアログボックスが表示される。

③ダイアログボックス下部にタイムライン(シークバー)が表示されるので、再生開始したい・終了したい時間に[開始時間]と[終了時間]を合わせる。

④[OK]をクリックすると、動画の再生時間が変更される。
動画と動画を繋ぐ(カット割り)
続いて動画の途中の不要な箇所をトリミングしつつ、トリミングした前後の動画をつなぐ方法です。これは「カット割り」と呼ばれ、動画編集においては最も多く行う作業の1つでしょう。
ただ実のところ、パワーポイントの中でカット割りを行うことはできません。できるのは前述の「トリミング」(不要な一部を削除する)だけで、1つのスライドの中で動画と動画をつなぐことはできないんですよね。ここが不便なところ。
ただし、手間はかかりますが無理やりカット割りを実現する方法はあります。イメージとしては「動画を複数のスライドに分けて用意しておき、それらをパワポの[画面切り替え]機能を使って順番に自動再生させる」やり方です。具体的な手順を以下よりご紹介していきます。
今回は例として、約7秒の動画の途中(3~5秒)をカットし、残った前後の映像をつなげてみます。
①スライド内に任意の動画を挿入する。

②前述の「不要な箇所をトリミングする」を参考に、まず動画の前半3秒以降をトリミングする(前半3秒を残す)

③ ②で作成した動画をスライドごと複製する。

④複製した動画を選択し、[再生]タブ→[ビデオのトリミング]→タイムライン(シークバー)の[開始時間]を5秒(5.000秒)の位置に、[終了時間]を一番最後に合わせて、[OK]を押す。

⑤1枚目のスライド(前半3秒の動画が載っているスライド)を選択し、[画面切り替え]タブ→[画面切り替えのタイミング]で[自動]にチェックを入れる([クリック時]のチェックは外す)。

⑥スライドショーで再生すると、1枚目と2枚目のスライドが自動で切り替わり、前半3秒までの動画と後半5~7秒までの動画がつながって見える。
以上のような方法を使うことで、パワーポイント内で動画のカット割りを行うことができます。
短い動画であればこの方法でも対応できますが、長尺の動画になってくると、カット割りとして上記作業を何度も繰り返していく必要があるので、正直なところかなり手間がかかります。
テロップを入れる
テロップ挿入もパワーポイントでは動画編集ソフトのように簡単に行うことはできません。そのためインタビュー動画のように話し手の言葉を常に字幕でテロップ表示する場合などは、残念ながらこちらもかなり手間がかかります。
パワーポイントでテロップを入れる場合は、専用のテロップツールのようなものはないので、通常のテキストボックスとアニメーションの[ブックマーク]機能を応用してテロップのように表示させます。
[ブックマーク]機能は通常あまり使わない機能かと思うので、耳馴染みがない人も多いと思いますが、これを使うことでテロップが自動で切り替わるタイミングを指定することができるんです。具体的な手順は以下を参照ください。
今回は例として、1本の動画の中に字幕形式でテロップを入れる(複数のテロップが自動で切り替わりながら表示される)方法を解説してみます。
①スライド内に任意の動画を挿入する。

②挿入した動画を選択し、[再生」タブ→[再生]ボタンをクリックして動画をプレビュー再生させ、最初のテロップを表示させたいタイミングになったら一時停止する。

③[再生]タブ→「ブックマークの追加」をクリックすると、テロップを表示させるタイミングがマーキングされる。

④再度[再生」タブ→[再生]ボタンで続きをプレビュー再生し、2つめのテロップを表示させたいタイミングで一時停止し、「ブックマークの追加」を行う。これで字幕のテロップが切り替わるタイミングの設定が終了。

⑤テキストボックスを動画の上に挿入し、任意の文字を入力する(=最初に表示させるテロップ)。

⑥「アニメーション」タブで任意の開始アニメーションをテキストボックスに設定する。
⑦開始アニメーションを設定したテキストボックスを選択した上で、[開始のタイミング]→「ブックマーク時」→[ブックマーク1]を選択する。

⑧再度同じテキストボックスを選択した状態で、[アニメーション]タブ→[アニメーションの追加]→[終了]の中から任意のアニメーションを追加する。

⑨同じテキストボックスを選択した状態で[アニメーション]タブ→[アニメーションウィンドウ]→終了のアニメーションを選択し、[開始のタイミング]→「ブックマーク時」→[ブックマーク2]を選択する。これで2つめにマーキングしたタイミングで最初のテロップが消えるようになる。

⑩新規で2つめのテキストボックスを動画の上に挿入し、任意の文字を入力した上で(=次に表示させるテロップ)、最初のテキストボックスの真上に重ね合わせる。

⑪「アニメーション」タブで任意の開始アニメーションを2つめのテキストボックスに設定し、[開始のタイミング]→「ブックマーク時」→[ブックマーク2]を選択する。

これで1本の動画の中で複数のテロップが自動で切り替わりながら表示されるようになります。この例ではまだ2つのテロップしか入っていませんので、長尺の動画で字幕が多い場合は、上記の作業を何度も繰り返していきます。
事前にテロップが切り替わるタイミングをマーキングしておかなければいけなかったり、テキストボックスに複数のアニメーションを設定してマーキングと紐づける必要があったりするので、実際にやっていくとかなり面倒です笑。
しかも切り替わるテロップの数だけテキストボックスを上に重ねていかなければいけないので、途中のテロップの文字修正なども非常に煩雑になります。やはりパワーポイントでこのような作業を行うよりも、動画編集ソフトを使った方が最終的には効率がかなり良いでしょう。
BGMを入れる
なお、動画の背景にBGMを入れることもできます。これはそれほど手間がかからないので、必要に応じて以下の方法で音楽・BGMを入れてみましょう。
①動画が挿入されているスライドを開いた状態で、[挿入タブ]→[メディア]→[オーディオ]→[このコンピューター上のオーディオ]をクリックする。

②[オーディオの挿入]のポップアップが立ち上がるので、任意の音楽データを選択し、[挿入]をクリックする。

③スライド内に音楽が挿入される(同時にスピーカーのアイコンが表示される)。

④スピーカーのアイコンを選択し、[再生]タブ→[バックグラウンドで再生]をクリックすると、該当のスライドがスライドショーで表示されたときに音楽がBGMとして自動再生される。

作成した動画を書き出す
最後にパワポ内で編集した動画の書き出し方法ですが、これは前述の「録画したスライドショー動画を書き出す」と同じでmp4形式のデータにエクスポートするだけです。具体的な方法は以下を参照ください。
①[ファイル]→[その他]→[エクスポート]→[ビデオの作成]を選択し、任意の画質を選んだ上で、[ビデオの作成]をクリックする。

②任意の保存場所を選択し、[OK]をクリックすると、録画した動画データの書き出しが開始される。

まとめ:効率は悪いがパワポでも動画編集・作成は可能
今回は専用の動画編集ソフトを使わずに「パワーポイントで動画を作成・編集する方法」について解説してみました。
パワーポイントは非常に有能なツールで、様々な資料などを作成することができますが、動画の編集・作成に関しては現状まだ最適化はされておらず、いろいろと手間がかかってしまいます。そのため全体の作業量を考えれば、やはり動画編集ソフトを使った方が最終的な効率は良いでしょう。
ただ今回ご紹介した通り、決して動画編集・作成ができないわけではないので、使い慣れたパワポで動画を作りたい!という方は、ぜひチャレンジしてみてくださいね。
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