当ブログでは、ビジネスシーンで作成する資料で“誰でも・手軽に使える”レイアウトノウハウ・テクニックをお伝えしています。
今回はプレゼンにおける「配布資料」について。プレゼンを行うときに投影用資料と併せて配布資料を作る(配る)ケースも多いと思いますが、その配布資料を作る際に気をつけたい点をまとめてみました。
日頃プレゼン資料などをパワーポイントで作成することが多い方の参考になれば幸いです。
- プレゼン資料は「見るもの」、配布資料は「読むもの」
- プレゼン資料をそのまま配らず、配布資料は別途制作する
- 配布資料だけが“独り歩き”する可能性があるので、あやふやな表現は極力避ける
- 株式会社トリッジ代表取締役 / デザイナー / コンテンツディレクター
- グラフィック・WEBデザインや自社で展開するオウンドメディアのディレクションを行いつつ、パワポ資料作成の研修講師兼アドバイザーとしても活動中。パワーポイント資料作成の企業研修実績も多数(延べ150社以上、2,000人以上にレクチャー)。著書に『ひと目で伝わるプレゼン資料の全知識』(株式会社インプレス発行)がある。
プレゼン資料と配布資料は役割が異なる
内勤業務の方は、日頃プレゼンをする機会も多いと思いますが、その際投影資料と一緒に「配布資料」を用意するケースも多いはず。むしろ聞き手の方から「配布資料をもらえませんか?」と催促されてしまうこともあったりしますよね。
そんな配布資料を用意する際、皆さんどのようなところに気をつけているでしょうか。もしかして、投影用のパワーポイントをそのまま配っていたりしませんか?
もし「投影用のものをそっくりそのまま印刷して配っていた!」という方がいれば、今後は少し改めた方がいいかもしれません。なぜなら、投影用のプレゼン資料と配布資料は、そもそもプレゼンにおける“役割”が全く異なるからです。
今回は実は奥が深い「プレゼン時の配布資料」について、その役割や作成時に気をつけたいことをまとめていきます。
プレゼン資料(投影資料)は「見るもの」
先にお伝えしたとおり、実は投影用のプレゼン資料と配布資料は、そもそもプレゼンにおける“役割”が全く異なります。まずプレゼン資料ですが、こちらは“トークの視覚的な補助”が主な役割です。
プレゼンにおける主役はあくまで「トーク」。でもトークだけだと聞き手も記憶に残りづらいし、内容のイメージも湧きづらくなります。そのため、それをビジュアルでサポートしてあげるために「プレゼン資料」があるわけです。
ということは、プレゼン資料では文章での説明はほとんど必要なく、トークにおいて大切なところだけに情報を絞り(=情報の取捨選択)、それを視覚的に(図解・アイコン・画像・グラフなどで)表現・デザインする必要があります。つまり、プレゼン資料は「読んで理解するためのもの」ではなく「見て理解するためのもの」なのです。
本で例えるなら、プレゼン資料は「小説」ではなく「絵本」のようなイメージを持つといいでしょう。
配布資料は「読むもの」
一方で配布資料は“プレゼン内容の振り返り”がメインの役割です。プレゼン進行中は、基本的にトークと投影用のプレゼン資料の2つがあれば内容を理解することができます。しかし聞き手からすると、プレゼン終了後に内容を振り返りたいケースも出てきますよね。あとは決裁・稟議に回す際にプレゼン内容をみんなで共有するべく、何か参考資料を添付しないといけなくなったり。
そのような時に、プレゼン内容の振り返り(こんな内容だった!ということを思い返す・他者と共有する)ができるよう用意されるものが「配布資料」です。
ということは、トークがなくてもプレゼン内容が理解できるように、配布資料にはある程度文章での説明が必要になってきます。つまり、配布資料は「見て理解するためのもの」ではなく、「読んで理解するためのもの」なのです。
以上のことからわかるとおり、投影用のプレゼン資料と配布資料は役割が全く逆。この役割の違いを意識できていないと、非常にわかりづらい資料になってしまうだけでなく、内容面で誤解を与えてしまう可能性も出てくるので(後述)、十分注意が必要です。
Appendix(アペンディックス)とは?
なお、プレゼンにおける配布資料の関連用語として「Appendix(アペンディックス)」があります。Appendix(アペンディックス)の元々の単語の意味としては「書籍などの付録や付属物」という意味合いになりますが、ビジネス・プレゼンにおいては「本文に関連する事柄を補足する参考資料・補足資料」という意味で使われることが多いですね。
社会人1年目の新人さんなど、まだカタカナビジネス用語に慣れていない方は、この用語もこの際に覚えておきましょう笑。
配布資料で気をつけたいこと4つ
配布資料の役割が整理できたら、次に配布資料を作る際に気をつけたいことを押さえていきましょう。主に気をつけた方が良い点は、以下の4つです(詳細は下に続きます)。
- 投影用のプレゼン資料をそのまま配らない
- 言葉・文章での説明を多く盛り込む
- プレゼン資料で漏れた周辺情報をフォローする
- 配布資料だけが“独り歩き”する可能性を考慮しておく
投影用のプレゼン資料をそのまま配らない
まず1つめは「投影用のプレゼン資料をそのまま配らない」ということ。前述したとおり、プレゼン資料と配布資料はそもそもの役割が全く異なります。ビジュアルメインの投影用プレゼン資料だと、「読んで理解するための資料」である配布資料の役割が果たせないことも多いため、なるべくプレゼン資料をそのまま配るのは避けましょう。
少し手間は増えてしまいますが、投影用の資料とは別に、配布用の資料も作った方が聞き手にとって親切です(どうしても時間がなくて、配布資料を別途用意するのが難しい時はしょうがないですが…)。
言葉・文章での説明を多く盛り込む
配布用の資料を別途作る際は、レイアウト・スタイルはある種自由です。ただし、投影用のプレゼン資料とある程度中身は連動させつつ、ビジュアルでの説明よりも言葉での説明を多く盛り込みましょう。
前述の通り、配布資料はあくまで“プレゼン内容の振り返り”がメインの役割であり、「読む資料」です。ビジュアル情報が中心になってしまっていると、配布資料を後から読み返した際に細かなプレゼン内容を思い返しきれないことがあるので、言葉での説明を追記してあげましょう。
たとえば以下の例のようにプレゼン資料(投影用資料)を作ったとします。こちらの資料はあくまで「見る資料」なので、グラフを中心としたビジュアル要素中心に構成します。
配布資料はこのプレゼン資料(投影資料)をベースに作ってもOKです。たとえばグラフのビジュアル情報をもっとコンパクトにして左側に配置し、空いた右のスペースに言葉での説明を端的な箇条書きで表現していくのも良いでしょう(下例参照)。
このように言葉での説明を多く盛り込むことで、後から見直した時に詳細を思い返しやすくなったり、プレゼンに参加していない人が見ても、ある程度内容を理解できるようになります。
なお、言葉での説明は端的かつわかりやすい文章で書くのを忘れずに。長々と書いてしまうと、それだけで読まない人も出てくるので笑、あくまで端的な表現にするのが大切です。
プレゼン資料で漏れた周辺情報をフォローする
投影用のプレゼン資料は、トークの重要なところのみをビジュアルで表現するため、情報の取捨選択が必要になります。その結果、やむを得ず省かなければならない情報(検討の背景、関連情報など)も出てくるはず。そのようなプレゼン資料で漏れた“周辺情報”は、配布資料に盛り込んでフォローしましょう。
基本的にプレゼンは自身の主張や考え・メッセージを伝える場なので、パワーポイントのプレゼン資料にはそのメッセージに直結する情報やデータのみを記載します(=情報量を絞る)。そしてそれ以外の「こんなことも念のため知っておいてほしい!」というような主張の背景細部や関連情報(用語解説なども含む)がある場合は、配布資料に記載し、こちらで網羅的に補足してあげるイメージでOKです。
このように配布資料の方に情報・データを網羅しておけば、いざ細かなところを質問された時にも「配布資料の◯ページをご覧ください」と言って対応することもできます。
なお、プレゼン資料の情報量の目安に関しては、以下の記事で解説しているので、お時間あれば関連情報としてこちらも併せてご覧ください。
配布資料だけが“独り歩き”する可能性を考慮しておく
なお、配布資料は決裁・稟議に回す際に参考資料として添付されることもあります。つまりそれは、プレゼンの聴講者ではない(内容を全く知らない)人の目に触れる機会も多いということ。
ということは、配布資料にあやふやな表現が混ざっていると、こちらの意図とは違う解釈・誤解をされてしまい、それがそのまま広まってしまう可能性があるわけです。そのような“資料の独り歩き”による悪い事態を避けるために、配布資料では特にあやふや・曖昧な表現をしないようにしましょう。配布資料は文章での説明が多くなるはずなので、なるべくこちらの意図がはっきりと伝わるような明快・明確な文章表現にすることが大切です。
以上の4点を意識して配布資料を作成すれば、プレゼン聴講者にとってもわかりやすい・親切なものを渡すことができます。ぜひ参考にしてみてください。
配布資料はいつ配るのが正解?
最後に、配布資料を配るタイミングについても触れておきます。結論から先にお話しするなら、配布資料を配るベストのタイミングは「プレゼンが終わった後」です。理由としては以下の3点が挙げられます。
- そもそも振り返り用の資料が最初から手元にある必要性がない
- 配布資料を先に配ってしまうと、聴衆の意識がプレゼンに向きづらくなる
- 配布資料を先に配ってしまうと、プレゼン中の“驚き・サプライズ”的な内容の効果が薄まる
何度もお伝えしている通り、配布資料はあくまで“プレゼン内容の振り返り”がメインの役割であり、プレゼン中に手元にある必要性がそもそもありません。
また、配布資料を最初に配ってしまうと、聴衆の方々がメモを取ることに必死になって、プレゼンを聞かなくなって(意識がプレゼンに向かなくなって)しまったり、プレゼンに驚きを感じなくなってしまうこともよくあります。
そのため配布資料はプレゼンが終わった後に配るのがベター。基本的には最後に配るようにしましょう。
ただし、相手から先に配ってほしいと求められた時や、レクチャー系のプレゼン(研修など)の時は、事前に配布してももちろんOKです。特にレクチャー系の場合は「聴きながらメモを取らないと忘れてしまう!」という人も多いので、そのような時は臨機応変に対応しましょう。
まとめ:配布資料を別途作る時間も考慮して準備を進めよう
今回はパワーポイントで作るプレゼン用の配布資料の役割・作る際に気をつけたい点をまとめました。
プレゼンにおいては脇役な配布資料ですが、聴講者にとっては実は非常に大事な存在です。投影用のパワーポイント資料をそのまま配ってしまうと、配布資料としての役割が果たせないケースが多いので、なるべく別途作成するようにしましょう。
そのためにはプレゼン本番から逆算し、配布資料を作る時間をしっかり確保しておくことが大切です(投影用資料をそのまま配ってしまう一番の原因・理由は「作る時間がないから」ですからね笑)。
日頃プレゼンの機会が多い方にとって、今回の内容が参考になれば幸いです。